管弦楽曲の映像のコメントです。
1995年4月19日と20日にウィーンのムジークフェラインザールで行われたショルティ-VPOの定期演奏会のライヴ。
タイトルが示すように、ハンガリーの作曲家やハンガリーつながりの曲が選ばれている。
何かと「悪い」噂のあったショルティとVPOの関係だったが、世代がかなり変わったせいか、ショルティもオケのメンバーも割とリラックスムード。「Golden Ring」とはえらい違いである。もちろん演奏は真剣なのだが、適度に力の抜けた爽快な演奏が聴ける。
冒頭の「ハーリ・ヤーノシュ」は個人的に好きな曲で、特に第2曲の「ウィーンの音楽時計」はクセになりそうだ。師匠の曲を振れる、ということがとても嬉しい、ということがショルティの表情から読み取れる。リズム刻みが重要な曲であるにもかかわらす、むしろ、みずから演奏を楽しむかのように要所以外ではオケに任せているようにも思えた。また、なかなか目にすることができない楽器ツィンバロンの「実演」も楽しめる。
ところで、第5曲が終わった時点で拍手が入る、ということは、ウィーンの聴衆にもあまり馴染みのない曲だったのかもしれない。VPOの客でもこうなんです。途中の楽章が終わって拍手をする「初心者」さんがいても馬鹿にしないようにしましょう。
師匠の小品2曲と昔からの得意曲は、さすがに颯爽とした仕上げり。
ラストのベト7は指揮者にとってもオケにとっても手慣れた曲だが、そんななれ合いは感じられない。決してテンポは速くないが非常に構築的かつメロディアスな演奏だ。緩叙楽章でもフレージングに表情をつけることを怠らず、芯のある作り方になっていてだれることがない。また、時々VPOの金管はひどいのがあり、敬遠していたこともあったが、そんな心配は今回は無用だった。CSOのように派手に鳴らすことはないにせよ、当時82才のショルティだが、「枯れた」とか「なあなあ」といった印象の全くない生気に充ち満ちた快演。
1995年7月5日、スイス・ジュネーブのヴィクトリアホールで開かれた国連創立50周年記念コンサートの映像。
以前、音源だけは発売されていたが、今年この際に創られたワールド・オーケストラ・フォー・ピースが10周年を迎えたことから、ゲルギエフ指揮のCDと、このショルティのDVDが2枚組で発売されたもの。
リハーサル風景やインタビューもあり。
このようなブルジョアのお祭り騒ぎ(と書くと言い過ぎだろうか)にバルトークをねじ込むのはショルティしかいないだろう。
が、それぞれのパートが「個」であり、かつ「全体」と連携しつつ調和する、といったタイトルの曲は、このコンサートの趣旨に合っていたかもしれない。
おかげで、オケコンを振るショルティという貴重な映像を見ることができる。